
Outlook
航空物流とJCG
物流業界における航空物流
ますます拡大する航空貨物需要

国際物流では、輸送手段として船を利用する海上貨物輸送と航空機を利用する航空貨物輸送が一般的です。国際物流の特色の1つは外国貨物を保管・管理する「保税倉庫」と呼ばれる倉庫が活用されること。保税倉庫を構えるエリアは「保税地域」と呼ばれ、保税地域内で外国貨物の取扱い全般が行われます。また、国際物流では貨物を海外に輸出、海外からの貨物を輸入するための通関手続きや国際輸送基準を満たす梱包作業、貿易書類であるインボイスの発行など多くの作業が発生します。経済のグローバル化が進む現代社会において、国際物流の果たす役割はますます重要になっています。
日本の輸出入
半導体製造装置、医薬品、電子機器など高付加価値製品の輸送を担うのが航空物流

円グラフは日本の輸出入取引について重量ベースと金額ベースで海上貨物と航空貨物のシェアを比較したものです。海上貨物輸送は原油や鉄鋼、自動車、穀物などが中心ですが、航空貨物輸送は半導体製造装置をはじめとする超精密機械や医薬品、電子機器、美術品、衣料など高付加価値製品が主体となります。このため、重量ベースでは大半を海上貨物が占めますが、金額ベースでは航空貨物が約3割を占める結果となっています。
航空物流におけるJCG
国際貨物、郵便の取り扱い

航空物流におけるJCGの役割をひと言で言うと空港内の貨物ターミナル(上屋)における出発・到着業務、上屋での貨物ハンドリング、地上ロジスティクスサービスの提供です。例えば輸出の場合、お客さま(荷送人)から航空貨物代理店を介して空港に運ばれた貨物を、上屋内でコンテナやパレットへの積み付ける指示を行います。輸入の場合は航空貨物代理店からの情報に基づき、上屋内でコンテナやパレットから取り卸し後の貨物の仕分け・保管や荷役担当者への作業指示、税関への申告や検疫の手配などを行います。ロジスティクスサービスでは到着した貨物を店舗別、配送方面別に仕分けし、配送伝票貼付、専用ラックなどへの仕分け作業を実施します。
保税上屋(ほぜいうわや)とは?
保税地域にあり、輸出入貨物の一次保管・荷捌きを行う施設

保税上屋は成田国際空港、東京国際空港などの国際空港貨物地区にある、輸出入貨物の一次保管・荷捌きを行う施設のことを指します。ここで貨物の分類・仕分け・検査・税関手続き・一時保管などの作業を行います。
航空物流とJCGのこれから
輸送量は今後20年間で現在の2倍となる予測
輸送量は今後20年間で
現在の2倍となる予測
産業構造の変化により航空物流のマーケットは今後も着実な成長が見込まれています。例えば自動車のEVシフト、知能化により部品・半製品の輸送が拡大します。また半導体を多用する産業構造への転換が進み、半導体や半導体製造装置の輸送が増大します。コロナ禍もあって医療新薬、ワクチン、検査試薬などの市場が拡大し、医薬品の温度管理輸送の重要性が拡大します(下記参照)。また、越境型のECが拡大することで小口・多頻度輸送ニーズの拡大が見込まれます。
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医薬品・生鮮品輸送の
世界的増加 -
ECの急拡大
(家電製品・衣料など) -
アジア太平洋地域を中心に
自動車関連製品・農水産物などの需要増
航空貨物市場の動向
旅客市場と比較して
コロナ禍の影響は小さい

2020年からの新型コロナウイルスの拡大により、国境を越える人やモノの移動が大きな影響を受け、航空業界は大きなダメージを被りました。しかしながら2019年から2020年にかけて国際線の旅客数は4分の1に激減した一方で、貨物は2割減に止まりました。早くも2020年下半期からは回復に転じており、今後は前述のように成長軌道へ復帰し、航空貨物の輸送量は今後20年間で現在の2倍となることが予測されています。
進化する高付加価値倉庫
成長する医薬品の
輸出入ニーズに応えるため
医薬専用定温庫
“JAL MEDI PORT”(JALメディポート)
を成田国際空港に新設

日本の医薬品の輸出入は過去10年間で約2倍に成長しています。医薬品の中でも治験薬や試薬、ワクチンなどは厳格な温度・時間管理と輸送品質が求められ、ほとんどが航空貨物で運ばれています。2022年10月に成田国際空港に新設された医薬専用定温庫“JAL MEDI PORT”は、国内空港における医薬専用定温庫では最大規模の総面積を誇ります。高性能な温湿度モニタリングシステムによる徹底した温度管理、衛生管理が行われた庫内で、医薬品の高品質な保管が可能です。